1日で何本の映画が観れるだろう?



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みなとみらいの109シネマズが閉館するという。もともと10年契約で、建物を取り壊すことが決まっているらしい。そう知って、胸がキュッと萎んだかと思うと、その反動でいくつかの記憶があふれ出してきた。

10年前、大学生になって横浜に来た僕は、出来たてでピカピカの109シネマズによく通った。「みなとみらい」と言っても、かなり外れた場所にあって、(これまた2年前に取り壊された)ジャックモールを抜けた果てにある。当時は、人通りもほとんどなくて、今みたいなマンションも、マリノスの練習場も、何もなかった。まるで「世界の終わり」みたいに、忘れられた草地が広がっていて、目の前には空と海しかなくって。それでいて「未来の始まり」のようでもあって。あてもなくバイクにまたがった時は、気がつけばいつもここにいた。

「1日で何本の映画が観れるんだろう?」そう思い立って、朝イチからレイトショーまで1日中いたことだってある。エンドロールが始まる瞬間、ダッシュで部屋を移動したりして。そのとき、偶然バイト先の先輩カップルに会ったりもして。その二人は今、結婚して子供もいる。確かに、10年とはそういう時間なのだ。

「ゴーン・ガール」を観ようと、久しぶりに来た109シネマズ。そこで突然知った閉館の事実。建物が上書きされたら、記憶も上書きされるのだろうか。「そんなわけはない」と思いたいけれど、記憶を辿るためのパーツみたいなものが、そこから消えてしまう。そのことが、少しだけ寂しい気持ちになるのでした。