人と人との 距離感について、 話をしよう。



人と人は、お互いの距離感を、
「ものさし」で測っているかのように
慎重に、歩み寄りながら調整していく。

「もうちょっと踏み込めるかな?」
「いや、これ以上近づくとぶつかってしまう?」

初期段階でぶつかってしまったら即アウト。
関係を修復するのはかなり難しい。

ジリジリと歩み寄るギリギリの攻防を続け、
やがて、その間“ほんの数ミリ”というところまで接近する。

しかし、それで終わりではない。
人と人は、その“数ミリ”を保ったまま、
しばらくのあいだ、満員電車みたいに揺られ続ける。

『ドン!』と
この段階で、ぶつかってしまうことはあるだろう。
でも、ここまで近づくことに成功した相手ならば、

「あ、ゴメン」
「いーよいーよ」

でな具合で、多少ぶつかっても許される。
そして、さらに時が流れ、ぶつかりあうことに慣れたとき、
ようやく、「親友関係」と呼べるものができあがる。

初対面のほとんどは、距離感を測るだけでタイムアップだ。
決して時間に比例するわけではないが、コミュニケーションは
ひとつひとつがオーダーメイド。だから時間がかかる。

たとえば僕の場合。
決して踏み込みすぎないように、かなり慎重に近づくくタイプ。
しかも、ある程度まで進むと、一度そこで立ち止まってしまう。
いや、立ち尽くすといったほうがいいいかもしれない。

このまま近づいてもいいのか?
本当に僕は拒絶されていないのか?

つまり、相手が迎えにきてくれるのを待ってしまう。
あるいは、「あなたの通行を許可します」というサインを。
それさえあれば、僕も安心して近づいていける。

中には、ドーンと踏み込める達人もいる。
拒絶されるリスクを恐れるか、そうでないか。それだけだ。

リスクを恐れない勇気ある達人たちは、
きれいに磨いた足で、相手を決して傷つけないように
慎重に、かつ大胆に。たった1つの最短ルートを近づいてくる。
まるで、よく研いだ刀で、痕が残らないくらい美しく切るように。

さらに達人になると、自らルートを開拓したあと、
ずっと後ろで手をこねて見てる人たちを振り返り
「この人は大丈夫だから安心して!」と手招きしてくれる。
そうして、人と人の距離感をつなげられる達人もいる。

後ろから見守っているタイプの僕は、それを聞いて
「それならば、」と、そろり、そろりと近づいて行く。

世の中には、手招きされても近づけない人もいるだろうし、
逆に、いつでも踏み込めるけど自制している“居合い抜きタイプ”の人もいる。

長くなってしまったけれど、ここで僕が言いたかったことは、
「この人、私と距離を置こうとしてるな」と感じても、
実は、あなたの迎えを待っている人かもしれないということ。

「待つ」というのは、ほんとはちょっとズルいんだけど、
嫌われるのが怖くて、慎重になりすぎてしまう人なのだ。

相手のことを考えずに土足で踏み込むのは最低だけど、
怖がりすぎたり、遠慮しすぎたり、待ちすぎたり。
ただただ、他人任せにするのもやめなくちゃあね。