小説家は、キュレーター?



“税関吏・アンリ・ルソー”

彼は公務員でありながら日曜画家であったことからそう親しまれている。

一見すると遠近感のない稚拙な画に見えるが、実は葉っぱ一枚まで丁寧に描く緻密な画家であり、その腕前はピカソも評価したとされるほど。しかし、評価が高まったのは死後であり、生前は困窮しながら筆を取り続けたという。

そして、現在。
世界の美術館のトップであり企画展などの編集者でもある「キュレーター」と言われる人たちの中には、

「ルソーという名前を“税関史”がいらないくらい有名にしよう。」
「コレクターから眠れる作品を手に入れて解放しよう」
「キャンパスの下に残っているかもしれない別人の画を発掘しよう。」
「いやいやそれはさせない、一番上に描かれている画を守ろう」
「キュレーターもすごいが絵画といちばん向き合っているのは監視員?」

そんな様々な思惑や志をもって企画展などに取り組んでいる人がいる。
知らない職業の世界を覗き見れるのがおもしろかった。

でも、そんな美術館に関わるプロたちの努力あってこそだとしても、
原田マハという作家が「小説」に描くことによる波及力は大きく、
ルソーの史実に基づく物語を伝え、観てみたい気持ちにさせてくれる。

小説家という職業もまた、キュレーターなのかもしれません。