沈みゆく大国アメリカ/堤未果



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ウォール街は世界最大のカジノと化している。アメリカ人口のうち1%の超富裕層のマネーゲームに99%が犠牲になっている社会。日本も貧富の差が拡大しているが、アメリカと同じ未来をたどるだろう。日本でも近ごろリーマンショック以降、ブームになっている株やFXなんてカジノ以外の何者でもない。この本を読むとアメリカの今を通して、恐ろしい日本の未来が見えて来る。

 

リーマンショック以降、アメリカでは労働者の4人に1人が時給1000円以下で生活しているという。不動産によるマネーゲームが終わり、次は医療によるマネーゲームが始まっている。それがオバマ大統領による「オバマケア」。それは、表向きは日本と同じ国民皆保険制度。しかし、そこには搾取のカラクリがあった。

アメリカでは資産20億円以上の上位0.1%が国全体の富の20%を握っている。全体の8割を占める中流以下の富は17%。そして、自己破産の理由のトップが「医療費」。一度でもデカイ病気をしたらアウト。そんな社会、恐怖です。理由のひとつが、保険市場の一社か二社の独占状態にあること。強気の保険会社では、薬代も簡単に許可がおりません。

ところで、アメリカの教育業界では、1970年代に約4割だった非常勤講師は現在7割。貧困ライン以下の生活をしているという。オバマケアはそこに追い打ちをかける。企業が負担しなければいけない保険料を減らすために、一斉にパートタイム化されたのだ。そこで労働組合!の出番だが、組合の保険に入っていては、国の補助金が出ないシステムになっていた。パートタイム化で組合費も払えなくなる中、労働組合は力を奪われたのだ。

それでも「メディケイド」がある。つまり、国民皆保険制度になったんだから、ナマぽのように最低限は保証されるんでしょ?と考えたくなるが、なんと、受け入れてくれる医者がいないという。最低保険では国から医者への支払いが非常に低く、メディケイドの患者を受け入れれば受け入れるほど赤字になるという。

というわけで、全米医師の66%がオバマケアの保険ネットワークに入らないと答えているそう。そもそも、医療が保険会社に支配されている。患者の治療も薬の処方も、保険会社に聞かなくてはならず、書類作業も膨大。患者に「保険、おりませんでした」というと、なんで「ちゃんと話してくれないの?」と言われるストレス。ひとたび何かあれば、訴訟!訴訟!である。一度でも負けたらひとたまりもない。というわけで医師たちは訴訟保険に入る。ある医師は年収2000万円。訴訟保険が1750万円だという。自殺率トップは医者だというのも無理はない。

誰得なの?と言いたくなるが、保険会社と製薬会社の株価がぐんぐん上がっているという。アメリカではロビー活動が盛んだ。オバマケアの法案を書いたのも保険会社や製薬会社の人たち。それが終わると、大金とともにジョンソン&ジョンソンなどに天下りしていくそうだ。

この構図は、まさにサブプライムローンと同じ。壮大なビジネスモデルなのである。

 

と、はしょりまくりだが、僕なりに理解できたのはこういう話。アメリカでも日本でも共通しているのは、僕たち一般市民がシステムを知らなすぎること。確かに難しすぎるし、それ自体が陰謀めいているが、そこで諦めてしまっては金持ちの思うがままだ。金持ちは頭がいい。このまま、貴族と奴隷の時代に逆戻りしてしまわないためにも、僕たちは社会を知らなくてはいけない。知らなかったじゃ、取り返しがつかない日が来る前に。