あとで話せる物語がいっぱいあったほうがいいでしょ。
「猪子寿之×茂木健一郎」
TOKYO DESIGNERS WEEKのこの対談、発見がありすぎる!
猪子さんは徳島出身。毎年参加しているという阿波踊りは、近代化されずに残っている希有な祭り。踊る人、観る人に分かれてなくて、レイヴパーティーに近い。
そんな話から始まり、これを伏線にして対談は幸福な連鎖を起こして行く。
昔の日本人は龍安寺のようにバランスのない無秩序の中にある美を見つけた。西洋人はヴェルサイユ宮殿のようにバランスのとれた中にある美を見つけた。そこには、ギリシャ時代から黄金比が生み出されている背景もあるが、美は法則で決まっているなんて、日本人は決して考えない。
だからこそ。
僕たちは幸か不幸か日本人に生まれてしまった。それを無視して西洋的なるものをつくっても西洋人には適わない。でも日本的なるものであれば少なくとも日本人には伝えられるし、きっと西洋人にも届く。つまり、日本人なら日本的なる美といったものに、小さい頃から無意識に言語化されていない積み重ねがある。
そこで勝負したほうが、より強度なものがつくれる。
チームラボがつくっている日本的なるものは、ある意味では、日本文化を模写している。それを繰り返していけば本質に近づけるはずだから。自分たちが分からないことは模写すれば見えてくる。模写しながら進化していく。そればかりは、体験で積み上げていくしかない。
「しあわせって何だろう?」って考えたときに、「そのときどきが楽しくて幸せ」と「ふりかえって意義があったなぁという幸せ」は違う。脳の中の2つの回路がある。「毎日遊んで暮らして、振り返ってみると何やってたんだろう?」よりも「納期に追われて大変だったけど、振り返ればよいことしたなぁ」と思う人のほうが、最終的には幸せになれるという研究がある。
「あとで話せる物語がいっぱいあったほうがいいでしょ。」と猪子さんは頻繁に言うらしい。
脳科学には「フロー」が大事だと言われてきた。フローというのは、集中していて時間が経つのを忘れていて、そしてやってること自体が楽しい。そのときが、人間が一番クリエイティブになれるとき。猪子さんがすごいのは、一人でフローになるだけじゃなくて、みんなでフローになろうとできること。欧米では、創造性というのは一人でつくるものだという先入観があるが、みんなでのほうが日本人らしいのかもしれない。