熱意は準備に現れる。その準備が結果に現れる。
オリンピック大会の競技だと、メダルが金、銀、銅と3つあります。
でも招致レースは金メダルが一つだけです。銀も銅も意味がない。
その言葉にはとてつもない重みがあった。
この本には、オリンピック招致決定までの物語が記されている。
オリンピックプレゼンの勝負所は、45分間の予定のIOCからの質疑応答。
前回招致の際は20もの質問をあびた。今年は100の想定問答を準備。
結果、質問は5つ。予定より20分早くプレゼンが終わった。
おこがましくはあるけれど、僕たちのプレゼンと同じだな、と思った。
熱意は準備に現れる。その準備が結果に現れる。
「勝つためには戦略が幾重にもできていないとダメなんです。例えば、
某IOC委員は間違いなく、1回目の投票で東京にいれることができないのであれば、
じゃ、その次の2回目はなんとか…といった話ができていなかったのです」
ミズノ相談役の上治丈太郎が言う。2016年招致の際は熱意も準備も足りなかったと。
ところで、
僕は、オリンピック招致が決まったときの、この写真が忘れられない。
クリステルに惚れなおした、という話ではない。フェンシング太田雄貴選手の「表情」だ。
プレゼン前にはスクリプトがぼろぼろになるくらい練習していた、という話もグッとくるが、
まさに、大活躍!という働きだったそう。
自ら「現役のアスリート代表」として、招集団に「パッション」を注入する役目と心得て、
プレゼンターとして紹介された際は、フェンシングの構えをして会場の笑を誘った話も。
「僕はみんなに銀座のパレードのような“祝祭”を感じてもらいたい。日本のよさ、
こんなにスポーツが大好きな国民がいるということを伝えたいのです。」
想いが極限までつのり、考えに考え抜いた人ほど、発する言葉はシンプルになるものだと思う。
そして、本番に関するお話も。
競技会場の大半が、1964年東京五輪の会場も点在する「ヘリテージゾーン」と、
新設会場が多数を占める南東部の「東京ベイゾーン」に分かれるらしい。
東京に住んでいてもベイゾーンにはなかなか行かない。
でも、実は未来都市のように自然と都会が共存していて美しい。
レインボーブリッジを通りながら、毎日、アスリートは
こんなに素晴らしい景色を見ながら試合に行くんだなって思うと、
東京開催は、海外から来る選手に対してすごく誇れるお祭りになりそうだ。
つい先日、市川崑監督の長編記録映画「東京オリンピック」が観れる機会があって、
1964年オリンピック当時の熱を感じた。それは、今までに見たことがない
「人から生まれるエネルギーの集合体」だった。
2020年なんてもうすぐだ。そのとき、僕もその熱を受けとるだけでなく、
発する側の立場にいたい。太田雄貴選手に負けないくらいに。そう強く思いました。