どきっとして、目が泳いで、おおかみ座がぐらついた。/森絵都「永遠の出口」



「ほんとに保田のせいなのかな。岸本はいろんなこと、保田に押しつけてるだけみたいな気もすっけど」

どきっとして、目が泳いで、おおかみ座がぐらついた。いったい元道は何を言ってるんだろう?しらばっくれて、ごまかして笑って、それで終わりにしたかったけれど、顔が凍っていた。

「来年のこと考えるのって、キツいよな」

私の動揺を知ってか知らずか、元道が声をやわらげた。

「十年後ならいいんだよ。どんなにでっかい夢だって、十年後なら座りがいいっていうかさ。でも来年は近すぎて、望遠鏡で自分のニキビでものぞいてる気分になるっていうか……。さっさと就職決めたり、大学に行くって決めた奴ら、だから俺は結構すげえって尊敬してる」

森絵都「永遠の出口」の小説一説